12/24

いまどき誰もクリスマスだからと騒いだりしないだろうと思っていたら、そうでもないんだな。渋谷には朝も昼も夜もいつも以上に人がいたし、俺が行く場所行く場所では赤いミニスカートのサンタ達が花やアイスやケーキと酔えないシャンパン、それと夢や春なんかを笑顔と色気と根性で売りさばいていた。メリークリスマス!メリー、クリスマス!
自分がクリスマスと、それを取り巻くいろんなものから遠ざかっているのかどうかは別としても甘かった。もっといろいろ仕掛けておけばよかった。仕事もプライベートも。俺の生活にクリスマスが欠けていた。一年に一日しかないんだよぅ、と電車の中で誰かが言っていた。いつか買った水戸のおつまみ納豆。缶ビール。週末登る雪山用の大荷物。どれも別に今日じゃなくてもよかった。いつもよりちょっと高いワインを買って、チキンのケツにたくさんのハーブを詰めてローストして、俺は食べないけれど誰かのために甘いケーキと花を買って、夢と少しエッチな春を抱えて夜を過ごしてもよかったのかもしれない。俺は、一年の一日だとか今日だけの一つの夜とかが大好きだし、そういうのが毎日あるから充実してるわけで、なんだか忙しいふりをしてたら本当にどうでもよくなっていた。メリークリスマスが。シャンパンなんて今日しか飲むチャンスがないんだからさ。まったく。